<民事調停> |
一 |
民事調停の申立は簡易裁判所にします |
1 |
調停の申立は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所にします。民事調停を行う裁判所は、簡易裁判所です。民事訴訟の場合、訴訟価額140万円以下が簡易裁判所、140万円超は地方裁判所の管轄ですが、民事調停は140万円超の場合も簡易裁判所が行います。但し、当事者双方が合意した場合には、その合意した簡易裁判所で調停を行うことになります。 |
2 |
調停の申立の手続等は簡易裁判所の窓口で相談を。各裁判所では、受付相談センターや受付相談コーナーを設けて申立手続等の相談に応じています。 |
二 |
民事調停の申立書を作成 |
|
申立書には一定の様式があります。申立書などの裁判所の事件に関する書類は、平成13年1月1日から日本工業規格A4判の用紙を使用し、左綴じ横書きで作成することになっています。 |
@ |
当事者の表示 |
|
申立人及び相手方の住所・氏名を記載します。 |
|
法人の場合には、本店及び営業所の所在地、法人の名称、代表者の氏名を記載します。 |
|
当事者が未成年者などで訴訟能力がない人の場合には、法定代理人の住所・氏名も記載します。 |
|
代理人が申立をするときは、代理人の住所・氏名の記載も必要です。 |
A |
申立の趣旨 |
|
申立の趣旨は、申立が紛争となっている事件について、どういう解決を望んでいるのかを記載します。 |
B |
紛争の要点 |
|
どのような事情で、どのような紛争になり、どう解決してほしいかを簡潔に記載します。 |
C |
申立年月日 |
|
調停の申立をする年月日を記載します。 |
D |
申立の署名又は記名 |
|
押印 ・申立人(代理人)は署名または記名・押印します。押印する印鑑は認印でかまいません。 |
|
申立書が数枚になるときは、各葉(用紙)間に契印・割印をするか、または契印の代わりにページ数を付すなどして、文書の連続性が分かるようにします。 |
E |
裁判所の表示 |
|
申し立てる裁判所を記載します。 |
三 |
民事調停の申立書には添付書類が必要 |
1 |
本人が申立をする場合、戸籍(抄)本や住民票が必要なわけではありません。 但し、以下の場合には、次のような書類が必要です。 |
@ |
申立人あるいは相手方が法人の場合 |
|
当事者が法人の場合には、会社の登記事項証明書または資格証明書が必要です。これは、会社の住所地を管轄する法務局で交付してもらうことができます。但し、交付から3ヶ月以内のものでなければなりません。 |
A |
代理人が申立をする場合 |
|
弁護士が代理人になる場合には委任状が必要です。また、弁護士以外の人が代理人になる場合には、委任状及び代理人許可申請書 (上申書)が必要です。 |
B |
未成年者が当事者の場合 |
|
未成年者が当事者の場合、法定代理人が代わって申立をすることになりますが、代理権を証明するために戸籍謄本の提出が必要です。 |
2 |
証拠書類等の提出 |
|
民事調停規則2条には、証拠書類がある場合には、申立と同時に、その原本または写しを差し出さなければならないと定めています。この証拠書類等は、事件の種類によって異なります。 |
<資格証明に関する添付書類> |
@ |
当事者が未成年者の場合−戸籍謄本または抄本 |
A |
当事者が法人の場合−登記事項証明書 |
B |
弁護士が代理人の場合−委任状 |
<事件に関する証拠書類> |
@ |
貸金・借受金・立替金・求償・請負代金・保険金の場合−契約書・領収書 |
A |
売掛代金の場合−売掛台帳写し |
B |
約束手形金の場合−手形写し |
C |
交通事故の場合−交通事故証明書・診断書・後遺障害等級認定書・車体修理見積書・請求書 |
D |
所有権移転手続・所有権確認・抹消登記手続・境界確定等の場合 −不動産登記事項証明書・契約書・地積公図・評価証明書 |
E |
不動産売買・建物収去土地明渡し・家屋明渡し・敷金返還などの場合 −不動産登記事項証明書・契約書・評価証明書 |
四 |
民事調停の申立書には手数料分の印紙を貼って提出します |
1 |
手数料は調停を求める事項の価額によって決まります。申立書には、手数料をして収入印紙を貼ります。この手数料は調停を求める事項の価額によって異なりこの価額が高くなればなるほど手数料も多くなります。債務不存在などの調停の場合には、価額の算定が不可能ですので、95万円で計算して手数料として5050円の印紙を貼ることになります。この印紙には消印をしないでください。裁判所が申立書を受理した後に消印をすることになっているからです。また、借金の整理などの債務弁済調停事件で債務額が明確にできないときには、取りあえず5万円手数料算定基準の最低額とみなして300円の手数料を納付し、調停が成立したときに正確に計算しなおして、手数料を追完することになります。申立時には裁判所の手数料の他に、郵便切手も収める必要があります。この郵便切手は裁判所が調停期日に呼び出したりする場合などに使用されます。 |
2 |
調停の申立書の提出及び受理 |
|
民事調停の申立書は正本の他に、相手方の人数分だけ副本を作成します。提出は持参または郵送によることができます。この調停申立書が裁判所に提出されますと、受付の書記官が記載内容を確認して申立書を受理することになります。もし、記載事項に不備がある場合は、受付窓口で書記官から補正するように言われることもあります。また、必要な添付書類が不足している場合も追完を求められますが、調停の性質上、訴訟よりも厳格ではなく、早急に追完するように言って、調停の申立は受理する場合が多いようです。 |
3 |
民事調停の申立手数料(印紙で収める) |
@ |
30万円までの部分→その価額が5万円までごとに300円 |
A |
30万円を超え100万円までの部分→その価額が5万円までごとに250円 |
B |
100万円を超え300万円までの部分→その価額が10万円までごとに400円 |
C |
300万円を超え1000万円までの部分→その価額が20万円までごとに400円 |
D |
1000万円を超え1億円までの部分→その価額が25万円までごとに400円 |
E |
1億円を超え10億円までの部分→その価額が100万円までごとに1200円 |
F |
10億円を超える部分→その価額が500万円までごとに4000円 |
五 |
債権の保全や民事執行停止の手続をする場合 |
1 |
債権の保全の手続 |
|
調停が行われている一方で、金を貸した相手が財産を処分する場合などがあります。そうすると、せっかく調停が成立しても、 相手が調停の内容を守らないと、相手方の財産に対して強制執行をして貸金の回収を図ることができなくなります。こうした場合「調停前の措置の申立」をすることにより、調停の成否が決まるまでの間、調停のために特に必要があると認められるときには、調停委員会は、相手方その他の事件の関係人に対して、現状の変更または目的物の処分の禁止、その他調停の内容である事項の実現を不能または著しく困難にする行為の排除を命じてくれます。手続は調停申立後でなければできません。この「調停前の措置の申立」には、担保を申し立てる必要はありませんが、執行力がありませんので、強制的に従わせることはできませんが、間接的にこの措置命令に従わない場合に10万円以下の過料に処せられます。したがって、どうしても相手の財産などを保全しておきたい場合には、別に民事保全法による民事保全処分の申立をすることになります。 |
2 |
民事執行手続停止の申立 |
|
民事執行手続停止の申請 調停の目的となっている権利に関して民事調停の目的となっている権利に関して民事執行手続が進行している場合には、その執行を停止する手続(民事執行手続停止の申立)があります。その民事執行手続が調停の成立を不能または著しく困難にする恐れがあると裁判所が判断した場合に、申立人に担保を提供させて執行停止を命じます。申立調停の申立後(あるいは同時)でなればなりません。但し、この停止ができる執行は、公正証書に基づく執行手続や担保権実行に基く執行手続などで、裁判所で出された確定判決・仮執行宣言付判決・和解調書・調停調書などの執行力のある債務名義による民事執行を停止することはできません。 |
六 |
調停期日には出頭して相手方と話し合う |
|
調停の申立後、「調停期日呼出状」がきます。調停の申立があると、調停委員会(原則として裁判官1名・調停委員2名)が構成され、調停委員会は当事者に呼出状を送付します。この呼出状には、調停期日、調停場所、出頭すべき旨の記載がなされています。なお、この場合、相手方に対しては、呼出状と申立書副本が郵送されます。調停期日に病気などでどうしても出張できないときには、担当の裁判所書記官にできるだけ早く相談すると良いでしょう。手続としては、期日変更申請書を裁判所に提出することになります。また、やむを得ない場合には、家族の人や会社であれば従業員を裁判所の許可を得て代理人とすることができます(代理人許可申請書が必要)。また、調停期日までに、当事者双方は、紛争の事実や自分の主張を説明するための資料、考えを整理しておくことも重要です。また、調停ですので、トラブルを解決するための最低条件や案についても検討しておくとよいでしょう。 |
七 |
調停では話し合いによる解決のための努力がなされる |
1 |
調停では双方の言い分が聞かれます |
|
調停期日に出頭すると待合室は別々です。まず、申立人だけが呼ばれ、調停委員会から紛争の実情を聞かれます。紛争の実情は、調停申立書に、すでに記載していますが、さらに詳しい状況や不明の点などについて聞かれます。また、相手方は、その実情に関して言い分などを聴取されます。続いて相手方だけが言い分を聞かれます。次に、事実の調査が行われます。この事実の調査は、訴訟ほどの厳格な手続によらずに、当事者が持参した書類あるいは参考人から事情を聞くなどの方法で行われます。また必要な場合には、調停委員会は官庁・公署に対して、資料の送付あるいは調査の嘱託を求めることができます。さらに、不動産などの鑑定を希望する場合には、当事者の申立により鑑定人に鑑定を頼むことになります。 |
2 |
通常、調停案が示されます |
|
前記のような手続を経て、調停委員会は紛争の実情あるいは双方の主張を把握し、最も適切な解決法(調停案)を考えて、双方に示して説得します。当事者がこの調停案に合意すれば、これを調書(調停調書)に記載して調停が成立します。通常、調停が成立するまでの期間は、調停期日が3回程度開かれ、3ヶ月以内に全体の70%以上が解決します。また、双方の意見が対立してまとまる見込みがないときには、調停は打ち切られます(調停不成立)。ただし、裁判所が適当と思われる解決案(調停に変わる決定)を示す場合があります。この決定は双方が受け入れれば調停と同様の効力がありますが、当事者のどちらかがこの決定から2週間以内に異議を申し立てる効力はなくなります。 |
八 |
調停が成立した場合と不成立の場合 |
1 |
調停が成立の場合 |
|
調停が成立した場合 調停が成立した場合には、調停調書が作成され、原則として後から不服を申し立てることはできません。調停調書を受け取るためには、裁判所に「調停調書交付の請求書」を提出して交付を受けることになります。この調停調書には確定判決と同様の効力があり、もし、その当事者の一方が調書に記載された一定の約束を履行しない場合には、もう一方の側は調書に基づいて裁判所に強制執行の申立をして約束の内容を実現することができます。 |
2 |
調停が不成立の場合 |
|
調停が不成立の場合、トラブルを解決したいと思うのであれば、訴訟という方法があります。訴訟は紛争の対象となる金額が90万円以下の場合には簡易裁判所、90万円を越える場合には地方裁判所に申し立てることになります。なお、調停打ち切りの通知を受けてから2週間以内に訴訟を起こせば、調停申し立ての際に納めた手数料の額は、訴訟の手数料の額から差し引かれます。 |